


中国税制の概要

中国におけるビジネスにおいて、税制は非常に重要な問題です。昨今の経済成長を背景に、中国税務当局は中国におけるビジネス環境を最適化するため、納税者の税務関係手続の簡素化を進める一方、企業の信用評価及びその管理をますます強化する傾向にあります。
また2012年以降進められている流通税改革も2016年に全面展開を果たしましたが、その後も絶え間なくアップデートが行われております。日本企業のビジネス展開を考える上では、中国の税制はしっかりと理解する必要があります。
また2012年以降進められている流通税改革も2016年に全面展開を果たしましたが、その後も絶え間なくアップデートが行われております。日本企業のビジネス展開を考える上では、中国の税制はしっかりと理解する必要があります。

税目

中国の税目は、中央政府の税源となる国税、地方政府の財源となる地方税、中央・地方共通の財源となる共通税に分けられ、国家税務局と地方税務局によって、国税・地方税を徴収する体制となっています。
種 類 | 国 税 | 地 税 | 税 関 |
---|---|---|---|
所得税類 | 企業所得税 | 個人所得税 | |
流通税類 | 増値税、消費税 | -- | 関税 |
資源税類 | -- | 資源税、城鎮土地使用税 土地増値税、耕地占有税 |
|
特定目的税類 | 車両購入税 | 都市維持建設税、煙葉税 | |
財産行為税類 | 証券交易税 | 不動産税、車船税、印紙税、契税 |

主要税目の概要

1. 個人所得税
個人が取得する所得が課税対象となり、日本の所得税に相当します。個人の取得する所得は、賃金給与所得・財産賃貸所得・使用料所得・一時所得等、11種類に分類され、それぞれの所得区分ごとに別々に税額計算を行います。この中で日本企業・日本人にとって特に馴染みが深いものは、賃金給与所得になります。賃金給与所得は、日本と同様、収入が多いほど税率が高くなる累進税率方式が採られています。なお中国においては月ごとの申告納付が原則となります。
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- (1) 給与所得の税額計算
-
税額の計算は、日本同様、税率表を使用して計算されます。
基本公式は「個人所得税額=(税込給与額-基礎控除額)×適用税率-速算控除額」、基礎控除額は、外国人4,800元、一般の中国人は3,500元です。
2011年改正で税率表が改正され、税率は3%~45%の7段階としています。
等級 | 個人負担方式 | 会社負担方式 | 税率 | 速算控除額 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
~超 | ~以下 | ~超 | ~以下 | |||
1 | 0 | 1,500 | 0 | 1,455 | 3 | 0 |
2 | 1,500 | 4,500 | 1,455 | 4,155 | 10 | 105 |
3 | 4,500 | 9,000 | 4,155 | 7,755 | 20 | 555 |
4 | 9,000 | 35,000 | 7,755 | 27,255 | 25 | 1,005 |
5 | 35,000 | 55,000 | 27,255 | 41,255 | 30 | 2,755 |
6 | 55,000 | 80,000 | 41,255 | 57,505 | 35 | 5,505 |
7 | 80,000 | 57,505 | 45 | 13,505 |
- (2) 賞与の個人所得税
-
賞与については、年間1回性賞与(中国語:全年一次性奨金)については年に1回のみ優遇された計算方法により個人所得税を計算することができ、これ以外の賞与については給与と合算して税額を計算します。年間1回性賞与とは、企業の年間の業績や従業員の年間の功績などに基づき、従業員に年間1回に限り支給される年度末賞与等であり、半期賞与、四半期賞与など年間1回性賞与以外の各種賞与は含まれません。
年間1回性賞与の個人所得税の計算方法は、賞与を1回分の給与として、かつ賞与額を12ヶ月で割った金額に対応する税率表の税率及び速算控除額を適用して求めます。
- (3) 申告納付
-
源泉徴収義務者である給与賃金を支払う者もしくは納税義務者である個人が、毎月、給与賃金所得に対する納税額を計算し、翌月15日までに申告及び納税を行います。
また毎月の申告以外に、年間の所得が12万元以上の場合、年に1度、翌年の3月末日までに年間の所得につき自己申告を行う必要があります。ただし、これは高額所得者の把握や納税漏れなどを確認するためのものであり、日本の確定申告とは趣旨が異なります。
2. 企業所得税
日本の法人税に相当し、企業が事業活動によって取得する所得が課税対象となります。基本税率は25%です。中国の企業所得税には日本の事業税・住民税に相当するものがありませんから、法定実効税率(法人企業の利益に課税される税金の実質的な負担率を表すもの)は、企業所得税の基本税率25%となります。
- (1) 納税義務者
-
新企業所得税法では、納税義務者を「居住企業」と「非居住企業」に分類しています。
「居住者企業」とは、中国の法律により設立された、または、外国の法律により設立されたが、実際の管理機構が中国国内にある企業をいいます。
一方、「非居住者企業」とは、外国の法律により設立され、実際の管理機構は中国国内にないが、中国に機構場所を設けているか、または、中国国内に機構場所は設けていないが、中国国内源泉所得がある企業を指します。具体的には、前者は外国企業の駐在員事務所(代表処)等、後者は中国国内企業から配当等の投資所得や使用料所得などを有する外国企業が該当します。
- (2) 税率
- 基本税率は25%になります。これ以外の優遇税率が適用される企業としては、小規模薄利企業、ハイテク企業等が挙げられます。また、中国国内に機構場所を設けていない非居住者企業が稼得する中国国内源泉所得に対する源泉企業所得税率は、10%です。配当・利息・賃借料・使用料・財産の譲渡所得等が対象となります。
- (3) 各種控除
- 収入総額から控除できる各種控除とは、企業の生産経営活動に関連のある合理的な原価、費用、税金費用及びその他の支出のことをいいます。また、下記表のように特定の費用については、損金算入限度額を規定しており、当該限度額を超える発生額は収入総額から控除することはできません。その他、留意事項として、税務上、原価・費用として認められるためには、合法・有効な証憑を取得する必要があります。合法・有効な証憑とは、税務局が認めたもので、公式領収証(中国語:発票)が代表的なものです。これがないと、原価・費用として収入総額から控除することはできません。
控除項目 | 控除限度額基準 |
---|---|
従業員福利支出 | 賃金給与総額の14% |
従業員労働組合経費 | 賃金給与総額の2% |
従業員教育経費 | 賃金給与総額の2.5% (超過部分は翌年以降へ繰越可能) |
交際費 | 発生額の60% (当年度の売上高の0.5%以内) |
広告費および宣伝費 | 当年度の売上高の15% (超過部分は翌年以降へ繰越可能) |
寄付金支出 | 年度利益総額の12% |
- (4) 繰越欠損金
- 税務上の欠損金は5年間繰越することができ、将来の所得と相殺することができます。日本においては7年と規定されております。
- (5) 申告納付
-
納税年度は原則として西暦の1月1日から12月31日までとされています。納付すべき税額は、課税所得額に適用税率を乗じて減免税額・控除税額を控除して計算します。
申告納付方法は、予定申告による納税と確定申告による納税により行われます。予定申告は通常四半期ごと(または毎月)に行い、各四半期終了の日から15日以内に申告・納税します。
確定申告は年度終了後5ヵ月以内に申告を行い、予定納付額との差額を精算する形で納税することになります。予定納税額は、四半期(または月)の実際の利益額により計算します。なお、実際の利益額による予定納税が困難な場合は、前年度の課税所得額の四半期(または月)の平均額により納税します。
3. 増値税
日本の消費税に相当します。英語では、VAT(Value Added Tax)と言い、すなわち付加価値に課される税金を言います。売上税額から仕入税額を差し引いた金額(付加価値に対する税額)を企業が納付して、最終的に消費者が負担するという仕組みは日本と同じになります。なお、増値税は基本的に物品の販売のみが課税対象となっていました。しかし、2012年度より増値税税制改革が行われ、2016年には全てのサービス業も増値税の課税対象となりました。なお、税率は物品の種類やサービスの内容によって異なります。(税率表はこちら)
- (1) 一般納税人と小規模納税人
- 納税者は、仕入税額控除ができる一般納税人と仕入税額控除ができない簡易課税方式をとる小規模納税人に区分されています。小規模納税人が課税売上高の基準を超えた場合、必ず一般納税人資格の申請を行う必要があります。2018年5月1日より、小規模納税人の基準は、事業内容に係わらず、年間課税売上高が500万元以下に改正されています。なお、経過措置が設けられており、改正前に一般納税人の認定を受けている納税者も、2018年12月31日前に申請することで、小規模納税人へ変更が可能です。
- (2) 納税義務者
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中国国内で物品を販売、加工や修理・組立修理役務を提供する者、サービス、無形資産、不動産を販売する者及び物品を輸入する者が納税義務者となります。
ここでいう加工とは、委託者が原料及び主要材料を提供し、受託者が委託者の要求に基づき物品を製造かつ加工賃を受領する業務をいいます。また、修理・組立修理とは、損傷した物品、機能を喪失した物品を修復し、原状回復、機能回復を行う業務をいいます。
- (3) 税率及び税額計算
-
税率は物品やサービス内容に応じて異なります。納税額は、売上増値税額から仕入増値税額を控除して算定します。
すなわち、税抜売上額に適用税率を乗じたものから購買または支払時に受領する増値税専用発票(公式領収書)等に記載の仕入税額を差し引いた金額が納税額となります。
また仕入増値税額ですが、納税者の取得する増値税専用発票等は合法的なものでなければ、売上増値税額から控除することはできません。仕入増値税が控除できる発票の種類には、増値税専用発票、税関輸入増値税専用納付書、農産品購入発票、農産品販売発票があります。
税率はこちらからご確認下さい。 最新の税率についてはお問い合せ下さい。
- (4) 申告納税
- 一般納税人の場合、通常は1ヵ月単位で申告を行い、小規模納税人は四半期単位で申告を行います。申告及び納税期限は翌月15日まででとなります。また、輸入の場合の納税期限は、税関が税関輸入増値税専用納付書を発行した日から15日以内となります。納税地ですが、その機構の所在地で申告納税を行い、本店と支店が同一の県(市)にない場合には、それぞれの所在地で申告納税を行います。
- (5) 輸出還付
- 一般納税人が輸出を行った場合には、輸出製品にかかる仕入増値税の還付の適用を受けることになります。仮に、売上の全てが輸出である場合、輸出製品にかかる仕入増値額は全額還付されるのが本来です。しかし中国では、輸出製品ごとに還付率が0%~16%の間で定められており、還付率が課税率(標準16%)未満の場合は、還付されない金額が生じることになり、その金額は会社のコストとなる仕組みとなっています。還付の対象とならず会社のコストとなる控除還付不可能額は、生産型企業である場合は(輸出FOB価格-免税で購入した原材料価格)×(課税率-還付率)、商業型企業の場合は税抜仕入商品価格×(課税率-還付率)で求めます。当該還付率は、政策的に度々変更されるため、輸出企業にとっては常に留意すべき事項になります。 2018年5月の税制改正により、2018年7月31日まで、経過措置が採られています。詳しくは、こちらをご覧下さい。
4. 営業税
以前は、サービスの提供に対して営業税が課されていましたが、中国政府の方針で営業税から増値税へ移行が行われ、現在では営業税は廃止されています。
5. 消費税